なるほど天狗

創作民話 むかし福生

第三話「なるほど天狗」

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    むかし、福生に、かやぶきやねが ぽつり ぽつりしか なかったころ、そろそろ 春のたねまきを しようと、一人の百姓が、一くわ一くわ ひたいに汗をかきながら、あれ畑を ていねいに たがやしていました。


    それを、ちかくの 大きな けやきの木の上で、天狗が ながめていました。木の上からみると、小さなありが、すなを 一つぶ一つぶ ほりおこしているようです。

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    「やれやれ、人間てやつは、どうして あんなバカなまねを しているんだろう。あんな ひろい畑を、あんなちっぽけな くわなんかで、こつこつ ほりかえしたところで、なん日かかるか わからんじゃないか。それより、じめんを一ぺんに もちあげて、ドッコイショ、とひっくりかえせば、すぐ畑なんか できてしまうだろう」

    天狗は、あきれたように、一人ごとを いっていました。

    やがて 日もくれてきたので、百姓は しごとをすませ、うまそうに たばこを一ぷくしてから くわをかついで かえっていきました。


    その夜、おそくなってから、天狗は ヒラリと、木からとびおりました。

    「さあて、おれが この畑を ひっくりかえしてやるぞ。百姓のおっさん、あしたの朝、ここが りっぱな畑に なっているのをみて、びっくりぎょうてん、こしを ぬかすことだろう」

    天狗は 足をふんばって、畑のあぜに 手をかけました。

    「ウントコショ」

    力一ぱい、もちあげようと しました。畑は、びくともしません。

    「あれ?。ううむ、なまいきな」

    天狗は、白いきものを ぬぎすてました。足をふんばりなおして、ずぶりと、土の中に 手をさしこみました。

    「これでもかっ」

    赤いかおを もっとまっ赤にして、ものすごい力を だしましたが、畑は、ひらべったいかおをして すましています。

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    「なにおっ、こりゃ、ありゃ、そりゃ、どっこい!」

    ありったけの かけごえをかけて、二ど、三ど、五ど、六ど‥‥。なんかいやってもじめんはうごきません。

    天狗は、もう 汗びっしょり。

    畑の土が汗にまじって、かおも体も泥まみれ。夜が、しらじらと あけてくるまで ばんばりましたが、畑は やっぱり ひっくりかえりません。

  • 里のほうから、一ばんどりの なくこえが きこえてきました。

    朝日も のぼってきました。

    天狗は、とうとう あきらめました。

    「ふうっ、やれやれ このクソ畑め!むだっぽね おらせやがって」

    力のぬけた すがたを 人間に みられてはまずいので、かえろうとすると、百姓のたばこいれが おちていました。

    「あのおっさん、しごとのあと、うまそうに けむりをはいていたな」

    天狗は、まねをして 一ぷくしたとたん、

    「あっ、ちちちちち‥‥」

    ながい鼻に、きせるの火が くっついたので、とびあがってしまいました。

    天狗は、あわてて、けやきの木に かけのぼると、

    「やれやれ、人間のまねをすると ろくなことはない。それにしても 人間ちゅうのは、小さなことでも 一つ一つ つみかさねて、大きな しごとをする 動物らしい。どうやら みそこなっていたようだ。なるほど なるほど」

    鼻をさすりながら、すっかり かんしんしました。

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    朝、百姓が 畑にきてみると、人間より ずっと大きい足あとが、あぜのまわりに ごちゃごちゃ ついていました。わすれていった たばこいれが、なぜか、けやきのえだに ひっかかっていました。百姓はそれをみて、ちょっと くびをかしげただけで、また、こつこつと 畑おこしを はじめました。


    それからは、こつこつと はたらいている人の 耳だけに、山のほうから、

    「ナールホドー」

    と、いう声が、こだまのように きこえてきたそうです。

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お母様へ

●天狗坊

天狗には、大天狗、小天狗、烏天狗、木の葉天狗などいろいろあります。

一説には、山岳には、嵐を呼び雷を走らせる巨大な霊力・魔力が存在すると信じられ、怪奇な力の象徴として、神話の猿田彦や山岳修験者などのイメージが重なり合い、擬人化されたものといわれています。

他説には、天狗伝説は鉱山地帯に多く見られるところから、天狗は、鉱山王・毘沙門天が支配する金工の鬼・夜叉の変形だとされ、だから空も飛べるのだ、といわれています。

たとえば、溶鉱炉の火で、顔を真っ赤に染めた鍛冶師を、山伏姿にさせ、フイゴがわりに羽うちわを持ち換えさせると、なにかイメージがうかんできませんか。

一つ目小僧と同様、農耕文化の発達にともない金工技術者は、鬼や怪物扱いされたのでしょう。

いずれにせよ、ユーモラスな人間臭さと、神隠しのような超自然的な両面があったのかもしれませんね。

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